休学中の記録

Lake Haweaの休日(Holidays in Lake Hawea)

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ニュージーランド南島、サザンアルプスの東側山麓には氷河湖が列に並ぶように連なっている。テカポ湖、ワカティブ湖、ワナカ湖、プカキ湖などは観光地として有名であり、特に僕が滞在した春節の時期は中国人観光客が多かった。ところがハウェア湖は、有名なワナカ湖のすぐそばにあるにも関わらず本来の静けさを保っている。

Serpentine Rangeの旅を終えた僕は、休養を兼ねてこの湖の畔のLake Hawea Hotelにテントを張って滞在した。そして、湖水浴に周辺のハイキングにと充実した日々を過ごした。

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北朝鮮における登山について

かつて大日本帝国がその版図をアジア各地に拡張していた時代があった。日清・日露戦争に勝利して台湾・南樺太を領有し、朝鮮を併合し、満州にも手を伸ばした。当時、これらの「外地」で山林の調査・踏査を行った学者達は、現地の人文地理、自然地理に関する貴重な記録を残した。結果的に「植民地の開発・制圧/統治」という今日的には否定的に捉えられる国家的目標に加担しながらも、彼らが情熱を持ってその仕事に取り組んだことはその一字一句からヒシヒシと伝わってくるのである。

僕は学術的な側面からというよりは、台湾登山に対する興味をきっかけにこういった植民地統治時代の記録に触れるようになった。そして彼らの学者としての観察眼と行動力、その全てにおいてレベルの高さに驚かされると共に、その記録が第二次大戦の終戦と共にピタリと顧みられることが無くなったことを惜しいことだと思うのである。

そこで表題の北朝鮮における登山についてである。

半島の南側に位置する韓国と日本との交流は盛んであり、山に登りに行こうとする日本人が多いのは2016年6月号の岳人で韓国の山特集が行われたことからも伺える。

岳人 2016年 06 月号 [雑誌]

岳人 2016年 06 月号 [雑誌]

 

しかし、北緯38度線を挟んだ半島の北側に、日本アルプスに比肩する山岳が沢山存在しており、戦前に日本人によって書かれた記録がたくさんあることに思い馳せる人は皆無であるように思われる。だから、僕はそこに目をつけ、朝鮮半島が統一される日がいつかやってくることを信じて細々と当時の記録を収集し、その暁には開放後の第一登攀者として北朝鮮の山岳に足跡を残したいという野心を持って機会を虎視眈々と狙っていた。こうして北朝鮮登山計画は秘密のうちに準備が成されていたのであるが、僕自身就職してしまうと時間は減るし、そもそも半島情勢が動くことがしばらくはなさそうだし・・・・ということで95%ほどの諦めを持って、このような記事を書いて不特定多数の人々と共有することにしたのである。

それでは以下、北朝鮮の山の魅力を先人の文章と共に紹介していきたい。

遙かな山やま (1971年)

遙かな山やま (1971年)

 

 例えば北朝鮮には冠帽峰(2541ⅿ)を盟主とする冠帽連山と呼ばれる山域がある。シベリアを中心に分布するタイガ原生林帯の南端に位置し、高原上の穏やかな山並みの中に圏谷地形を数多く擁している。夏には高山植物が咲き乱れる美しい山々だ。

高臺の位置が高緯度の爲めに二千米を越す峰は準草木帯にあり、夏期お花畑の美しさは人跡稀なために荒される事もなく、珍奇なる草本の競争曲を奏でる處の植物群落を形成してゐる。草原あり礫原あり岩登りに好ましい懸崖も乏しからず、そこには行手を阻む笹類もなければ南鮮の山に見るようなニホヒネツゴの藪潜りもないのである、気候が大陸的に近いため可なり北倚りの高地でありながら萬年雪がない、八月に入れば雪は消失してしまふのである、故に夏期此地を訪れるものには氷雪に閉されたる雪の面影には接し得ないが交通其他餘りに文明化した日本内地や北海道等の山々にて味ふことの出来ない登高の原始的に属する愉快さ凄さ雄大さと而して不自由さに頗る興味を惹かれるであろう。

齋藤龍本「朝鮮の屋根冠帽連山を紹介す」より

また、民俗学的に興味深いのは、台湾の登山に当時「蕃人」と呼ばれた原住民の存在が欠かせなかったように、当時の北朝鮮の登山記録には火田民と呼ばれる焼畑農耕民が度々登場することだ。平地国家の過酷な徴税、兵役や地主の小作料などを逃れるために、山の中に入って遊動的な生活を送ることは世界各地で広く行われている生存戦略であるが、それが朝鮮においては火田民であったのである。山野に火を放って焼き畑を作り、最初の年に馬鈴薯、翌年は粟やモロコシを作り、地力がなくなるとまた奥地へ入って山焼をするというのが一般的な生活サイクルであったようである。その他にケシを密栽培してアヘンを作ることで現金収入を得ているものもいた。1933年の朝鮮総督府の調査ではこうした火田民が朝鮮半島全域で150万人いたとされている。

道の両側に連なる山裾の傾斜地には、火田民のひらいた畑地がしがみつくようにして耕やされ、馬鈴薯や粟が作られている。その畑の隅にポツリ、ポツリと点在する丸太作りの小屋からは、朝食の準備だろうかー白い煙が細く長く、真っ直ぐに立ち昇っている。

飯山達雄「北水白山行」より

火田民は韓国ではもう見られないようであるが、北に行くとまだ沢山存在しているのではないだろうか。そんな人々との出会いに期待してしまうのも、地理的には手の届く場所に位置していながら謎があまりにも多い北朝鮮という場所の持つ魅力である。

北朝鮮に自由に行き来することができる日がいつか来ることを心待ちにしている。

  • 参考文献  

北鮮高地帯の利用に就て、1935、大可賀有爲、朝鮮山林會報第124號 p9-21

朝鮮の屋根冠帽連山を紹介す、1935、齋藤龍本、朝鮮山林會報第126號 p58-63

写真集 北朝鮮の山

写真集 北朝鮮の山

 
  • 追記(11月15日)

何と北朝鮮当局の協力を得たニュージーランド人によって北朝鮮の山が登られていることを知って愕然としている。不可能を可能にする行動力を持つ人は素直に羨ましい。なぜなら、それこそが僕に非常に欠けているもののような気がするからだ。

白頭大幹を縦走したニュージーランド人 :: Korea.net : The official website of the Republic of Korea

 

紅葉最盛期の谷川馬蹄形縦走

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上越国境の山々は、これまで朝日岳巻機山、丹後山~利根川源流の山々、仙ノ倉山方面など数多くの場所を歩いてきた。その中で有名でありながら空白地帯になっていたのが白毛門から谷川岳までの馬蹄形縦走だった。ちょうど紅葉最盛期という情報もあったのでこの機会を逃すわけにはいかないと思い、運動不足の体に鞭を打ってニュージーランド行き以来の友人と1泊2日でのんびり縦走した。

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台南食い倒れの旅(府城美食之旅)

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台南は台湾で最も歴史の古い街であり、赤崁樓や安平古堡をはじめ古跡には事欠かない。われ先にとバイクをぶっ飛ばす台北とは違ってどこかゆったりとした時間が流れているし、街で多く聞こえてくるのは国語(北京語)ではなくて閩南語。台湾の中で最も「台湾らしい」街の一つだと僕は思う。

當我第一次到臺南,這座城市給我的印象是天很亮,正如課本裏寫說跨越北回歸線就進入熱帶,的確與臺北不一樣了。坐在機車後座,吹著在我經驗中根本不像11月末的暖風,我充分的感受了熱帶“初冬”的溫暖。

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そして何よりも、台南へ行ったことのある人は口を揃えて言う。「台南は美味しい。」

そこで、今回は1泊2日で台南グルメを食べ尽くす旅に出かけた。

然後不需要太多時間,我便完全融入這個地區舒適自在的氛圍。去臺南之前的生活模式,不是在臺北看書就是去東部爬山。雖然我也很喜歡臺北,可是每天在上下班的時間看到源源不斷的機車車流,不但騎得很快,而且面對紅燈還爭著搶最前面一排的位子,難免有些悚然。東部的風景秀麗,可是山脈都很險峻,它是不讓一般人靠近的大自然

然而,臺南就不一樣。臺南仿佛我相當熟悉的廣島,陽光充足,生活節奏也不太快,充滿著溫馨的氣息。此外,肩負著許多歷史,臺南是不缺古跡的,像是赤崁樓、安平古堡等景點的名字我們一定不陌生,而最吸引我的是:有人説一句話「臺南很oishii」。

很多人說我是貪吃鬼,其實我也不否定。在臺南,我真的一直不斷地尋找美食。以下是我吃到的美食,每一道菜的照片附加介紹給日本旅客的解釋。

牛肉湯

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台南には善化という場所に屠殺場があり、明け方にその日屠殺された溫體牛肉(冷凍行程を経てない牛肉)が入荷する。そのため肉が新鮮で非常に美味しい。スープは鶏や牛の骨を長時間煮込んで作るらしいが詳細はよくわからなかった。いずれにしてもいくらでも飲めてしまうおいしさであり、スープがお代わり自由なのもうれしい。

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通常の肉以外にも牛腩(サーロイン)や牛雜(臓物)などがあるので好みに応じて食べ分けることができる。

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虱目魚

虱目魚は台湾南部で大量に養殖されている魚である。基本的に白身の淡泊な身なのだが一方で脂身も多くて、スープやお粥で食べると非常に美味しい。

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店の看板はいかにも台湾という感じ。店を営む家族の写真と踊る虱目魚というなかなか秀逸なデザイン。朝4時50分から午後2時という営業時間は日本では滅多に見られないが、台湾では「早午餐」即ち朝飯昼飯の時間帯のみ営業している店が非常に多い。

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虱目魚腸粥

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お粥以外に焼いても美味しい。脂がたっぷり乗った「乾煎魚肚」

サバヒー - Wikipedia

蝦仁肉圓

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エビ餃子。エビは火燒蝦と呼ばれる身の部分が少ないエビを使うが、味は極めて優れている。パクチーを上に振りかけて食べてもおいしい。できたてを頬張る幸せがたまらない。

 青草茶

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青草茶は蒸し暑い地域において瘴気を追い払う役割を持つとされる。青草がこれでもかと積み上げられた店の外観は独特の迫力を持っている。

土魠魚羹

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土魠魚とは鰆(さわら)のことを指す。羹というのはとろみのあるスープであり、肉羹、花枝(イカ)羹などは台湾の街でよく見かけるが、土魠魚は台南以外であまり見かけないように思う。

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下味をつけてカラっと揚げた鰆は、日本で言う竜田揚げに似ていて外はサクサクとして中は驚くほど柔らかい。これをとろとろとしたスープと一緒に頬張り、麺をズズズとすする。黒酢を少し垂らすと更に美味。

担仔麵

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台北鼎泰豐の小籠包と並んで有名な台湾料理とされるのが台南度小月の擔子麺である。今回は度小月ではなく「候夜擔子麺」というお店でいただいた。

このお店は日本贔屓なのか、阪神タイガースの暖簾といい和風美人の絵でいい提灯といい、日本を感じさせる要素満載の店内であった。

魚餃、魚麺

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その名の通り魚肉を使った餃子と魚肉を原料として作った麺である。海苔入りのスープと一緒に食べると海の香りが口に広がって美味しい。

鍋燒意麵

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日本の鍋焼きうどんの影響を受けてできた料理。油で揚げられた麺は、スープとよく絡んで美味しい。魚団子がトッピングされていたりするのは台湾風だ。

蝦仁飯

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蝦仁飯はその名の通りエビが上に乗ったご飯であるが、一緒に炒められた葱が地味に良い働きをしていると思う。


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ごはんの味付けは基本的にカツオの出汁、醤油、砂糖に、炒めたエビから出た汁もからめるという方式であるようだが、台南の特徴としてかなり甘めに調整されている。スープと一緒に食べると美味しく、特に鴨蛋湯はよく合う。

 鱔魚意麵

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鱔魚とは淡水魚のウナギであり、タウナギという日本語からもわかるように昔は田んぼに棲息しているものを捕まえて食用にしていたようだが、今は輸入物が多いという。滋養強壮に良いので好んで食べられ、特に代表的な料理が鱔魚意麺である。意麺とは卵と小麦粉を原料として油で揚げられた麺を指し、「台南意麺」として知られている。

意面 - 维基百科,自由的百科全书

棺材飯

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棺材飯というのは棺桶に似ているからという何とも笑えないネーミングであるが、厚切りのパンの中をくり抜いていろんな具材を入れたものである。中身はクリームシチューであったり各種中華料理であったりする。

米羹

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代表的な台南料理の一つ。下にはもち米が隠れている。もち米の一粒一粒の食感をしっかり残すところにこの料理の奥義がある。トッピングは魚酥と呼ばれる魚フレーク、肉躁、落花生、大根の漬物の組み合わせが鉄板である。味はかなり甘め。台湾南部の味付けは甘いことが多いという。

蚵仔煎 蚵巻

台湾では牡蠣がよく食べられる。特に西部の海岸沿いで大量に養殖されているが、日本の広島湾や三陸地方のように波が穏やかで養殖に適する内湾が得られるわけではないためか、海沿いの低地に養殖池を作って養殖するのが一般的である。しかし、養殖池が地下水を過剰に汲み上げることに起因する地盤沈下が問題になっていたりもする。

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蚵巻は見た目の通り牡蠣の天ぷらのようなもの。我々日本人は牡蠣フライが好きで天ぷにして食べることが少ない気がする。しかし天ぷらも非常におししい。

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蚵仔煎は台湾の屋台料理の定番。モチモチの生地(地瓜粉を使っているようだ)とフワフワの卵が牡蠣を包みこんでいて、それにトロトロの甘辛いタレをかけて食べる。個人的に食べるものに迷ったらこれを食べるというほど大好きな料理。

牡蠣料理のレパートリーは他にもたくさんあって、蚵嗲や蚵仔麵線も非常においしいのでおすすめ。

滷味

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ビールのつまみに買った滷味。特に豆腐の滷味はとても美味しいのでおすすめ。赤崁樓の近くのお店で買ったと思うが店の名前は忘れてしまった。

豆花

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安平豆花で豆花をいただく。台湾のスイーツの中で最も僕が好きなのが豆花だ。

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スイーツと言っても、豆花自体はふわふわの豆腐のようなものであって甘さはない。シロップやトッピングの紅豆・緑豆のほんのりとした甘さの中でペロっとたいらげることができ、スイーツなのに健康食を食べているような感覚が良い。そして柔らかい食感はやみつきになる。

おまけ

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台湾は亜熱帯から熱帯に位置するだけあって、かき氷系のスイーツが非常に多い。値段も300円も出せばかなりボリューミーなものが食べられるだろう。街歩きに疲れたら是非試してみることをお勧めする。

まとめ

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台南の街を歩いていると行列のできる小吃店に出くわす。行列は隣の店、時には隣の隣の店まで連なっていて、店の一番前に張り出した調理スペースではおっちゃん/おばちゃんの手から手へ、左から右へ、右から左へと絶え間なく皿が、食材が、料理が動いていく。このように人気店はものすごい忙しさなので、どのタイミングで注文したらいいのか戸惑ってしまうし、モタモタしていると台湾語でまくし立てられて「あわわわわ」となってしまんじゃないかという緊張感がある。けれどもそれは日本で初めてある居酒屋のドアをガラガラと開けるような緊張感とは異種のもので、店の外/内の境界が曖昧だから敷居が低く、散歩がてらにでも気軽に店に寄れるのが良い。

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そして、それぞれの料理の量は決して多くない。もちろん2つ、3つと料理を注文していくとお腹は膨れるが、沢山の種類のグルメが存在する台南においては多くの店をはしごした方がお得であると思う。酒を飲んでいないというのもあると思うが(そもそも台湾人はあまり酒を飲まない)、どれだけ食べても値段は日本の感覚では非常に安い。

参考文献

 



2013インド周遊の旅(A long trip around India)

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2013年の春休み、1ヶ月かけてインドの東半分を周遊した記録。10代最後の自由を謳歌していた当時の僕が書いた旅行記に加筆したものである。

中国西南部編はこちら

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