北朝鮮全土の地形図を閲覧できるサービスが台湾中央研究院によって整備されていた

 以前、北朝鮮における登山について上記の記事を書いた。当時大学4年生であった僕は、来るべき社会人生活や卒業論文執筆から目を背けるように大学図書館にあった日本統治時代の北朝鮮(当時は「北鮮」と呼ばれていた)の登山資料を読み漁り、時の流れに逆らいながら小さな夢を膨らませていた。

 ただ当時、朝鮮の山に関しては地図資料がなかなか見つからなかったため、書籍から見る概念図や文章からイメージを膨らませることはできても、実際に地図上に登山ルートを引き具体的な計画を描くまでは至らなかった。

 ところが最近、何と台湾の中央研究院が、北朝鮮のほぼ全土の地形図(日本統治時代発行)を閲覧できるサービスを開始していることに気が付いた。以前から自分が保有している登山記録を地形図と照らし合わせて見ると、一気に計画が具体味を帯びてきて、とても嬉しくなった。

 今後北朝鮮の登山計画を実現させるためには、米朝首脳会談を機に雪解けが進み北朝鮮への自由旅行が解禁されるのを待つのみ(?)なので、機会を虎視眈々と狙いたい。

 さて本題に戻って使い方を以下に説明しておく。

使い方

① ↓のリンクをクリック。

中央研究院人社中心地理資訊科學專題研究中心

② 地図を選択

初期画面はソウルの地図が表示される。左のメニューバーの「図階」で表示される地図を選ぶことができるので、『日治時期北朝鮮五萬分一地形圖』を選択。

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選択後、地図の表示範囲をソウルから北朝鮮に移動させる。下図の通り、数箇所空白範囲があるが、ほぼ全土の地形図が閲覧できるのが見て取れるだろう。

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③ 自分の見たい場所を拡大してみる

まずは景勝地として名高い金剛山から。

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山麓には寺院がたくさんあり、金剛山電気鉄道が整備され、ソウル(京城)からも気軽に観光に行けたことが見て取れる。

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金剛山は1930年代、朝鮮総督府鉄道局・ジャパンツーリストビューロー・金剛山電気鉄道が手を組んで、避暑に来る外国人等の観光客誘致を推進していた。70年後の2000年代には南北朝鮮交流の象徴となり再び脚光を浴びるようになるも、2008年の事件を契機に再びアクセスすることが困難になった。

さて、次は朝鮮半島第二の高峰である冠帽峰の地形図を拡大してみる。圏谷地形や高山植物帯を持つ冠帽峰に関する紹介は先の記事を参照いただくとして、早速地形を観察してみよう。

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地図を表示させる際には透過率を変えることができる。基層地図はgooglemapになっており、透過率を100%に設定するとgooglemapのみが表示され、逆に0%に設定すると選択中の地図(この場合、北朝鮮の地形図)のみが表示される。その間に1%~99%まで、様々な透過率で2つの地図を重ね合わせて見ることができる。上図はgoogleの衛星地図を背景にして少し立体感を出したもの。

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さて、さらにイメージを膨らませるために別途google earthで冠帽峰の地形を観察してみる。残念ながら、台湾中央研究院のサイトから直接google earthの表示はできないので、別途google earth を開き同じ場所を表示させてみる。

上の画像はgoogle earthで北東側から望んだもの。山頂直下から手前側に氷食谷が走っているように見える。。

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こちらはgoogle earthで北西側から冠帽峰を眺めたもの。画面右方の鞍部から広いU字形の谷が手前方向に走っているが、これが圏谷地形だろうか。

半島の山と風景

半島の山と風景

 

 それにしても台湾中央研究院の仕事には頭がさがる思いだ。自国のものでも何でもない日本統治時代の朝鮮の地形図閲覧サービスを整備することに予算を使える台湾政府の懐の深さには少し驚きである。

 登山に限らず、例えば戦前期の朝鮮研究を行う日本人研究者等にとっても有用なサービスだと思われるので、台湾中央研究院のgood jobに敬意を表してここに広く一般に共有しておく。

写真集 北朝鮮の山

写真集 北朝鮮の山