休学中の記録

春節で賑わう台湾の市場と廟

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台湾人と結婚してから1年になり、もはや自分にとって春節は万難を排して参加しなければならない家族行事となった。今年は2月5日が初一(旧暦の正月)なので、3日間の休みを取って2月2日~6日まで台湾に滞在した。1年ぶりに訪れる台湾はとても懐かしく、旧友と会い、台湾料理に舌鼓を打ち、それは楽しいひと時を過ごした。台湾は気温もちょうど良く、寒い日本に戻って仕事を再開するのが正直憂鬱でたまらないというのはまた別の話だ。

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春節の色んな習俗については1年前に幅広く紹介したので、今回の記事では特に市場と廟を詳しく紹介しようと思う。

歳末の市場巡り(通化街)

歳末の食材を買い求める人で賑わう市場を見たくて、義母と一緒に通化街まで買い物に行った。「大吉大利」「招財進寶」など書かれた赤提灯が新年気分を盛り上げ、通りは多くの人々でごった返している。

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台湾は丸っこい大根が多く売られている。大根は大根餅(蘿蔔糕)や、沢庵(閩南語で「菜脯」)などになり、この時期良く食べられている。

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春節の時分には、飾りつけがされたパイナップルが多く売られている。閩南語(台語(台湾語)と一般に呼ばれている)でパイナップルは「おんらい」と呼ばれるが、これを台湾では発音の似た「旺來」、つまり富み栄えるという意味の当て字で表記され、特に縁起物として重宝される。

パイナップルの旬の時期は品種にもよるが、通常はもっと後の春~夏である。つまり旧正月の時期のパイナップルは食用というよりはあくまで純粋に飾り物、縁起物としての位置づけなのだ。

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柑橘系の果物は、「橘(桔)」の発音が「吉」と同じなのでこちらも縁起物として売られている。特に多いのはこの招財進寳が張られたバージョンである。

台湾で有名な柑橘類としては、「茂谷柑」「椪柑」「柳丁」「草山柑」などがある。いずれの柑橘類も皮が固く日本のみかんほど剥きやすくはないが(茂谷が最も日本のみかんに近い気がするが、やっぱり少し違っている)、みかんとはまた違った野生的なおいしさがある。産地としては台北の北投、台中の東勢、嘉儀の梅山など、中部から北部の山間で作られていることが多いようだ。

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果物の箱は何だか日本人にも馴染みがあるクラシックな感じで、親近感を感じさせる。デザインを収集したら面白いかもしれない。

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右手前の白いタケノコのようなものは、茭白筍と呼ばれている。日本では「マコモダケ」と呼ばれ石川県や三重県などで少量生産があるが、滅多に目にすることはない。

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海參(なまこ)をはじめ、海産物も多く売られている。一帯は朝はこのように各種食材の市場として機能するが、夜になると夜市(臨江街夜市)としてたくさんの屋台が出現して雰囲気がまたガラリと変わる。台湾の街はこのような伝統市場(スーパー=超市と対比して台湾ではこのような市場を「傳統市場」と呼んでいる)や夜市が多く、歩いていて楽しい。

迪化街の年貨大街

今年も年貨大街はかなりの賑わいを見せていた。

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赤一色に染められた春聯などのお店。

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前回訪れた際には臘肉やカラスミなど食べ物を主に見ていたのだが、二回目の今日はちょっと変わったものを探してみた。例えばこのサボテンはとても可愛くて、家のテーブルに是非飾りたいと思ったが持ち運びにくいので今回は諦めた。

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「春」や「福」が貼られた観葉植物のガラスポットもとても可愛い。年貨大街は試食・試飲しながら店をはしごするのも楽しいが、この時期限定の可愛いお土産を探すのもまた楽しいだろう。

新年の廟

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初一は東部の礁溪に移動した。そして温泉に入り、ローカルな寺廟を回り、ゆったりとした日を過ごした。礁溪の隣町である頭城の協天宮では派手な廟の前に大きな木が茂り、その木陰に移動式屋台が並び、犬は平和にかまけて朝っぱらから駐車場で眠り、「The・台湾」というような風景があって思わずシャッターを押した。

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また別の廟の入口には紙銭の焼却炉があった。廟の前に駐車していた車はあっという間に燃えかすに覆われていく。台北の行天宮のように環境に配慮して線香や紙銭を燃やすことを禁止している廟もあるが、そういった場所はまだまだ少数派だ。

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春節の廟は参拝客が絶えず、お供え物や花であふれている。

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台湾のローカルな寺廟では、春節のこの時期、無料で「平安粥」などの食べ物が提供さる。参拝客は一通りお参りした後自由によそって食べることができる。この廟のものは付け合わせの沢庵(菜脯)まで用意されているあたり、ポイントが高い。

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「平安粥」はにんじん、しいたけ、油揚げなどが入ったお粥であり、その名の通り一年の無病息災を祈って食べられるもののようである。ベジタリアンの多い台湾なので、葷(肉が入っているもの)と素(ベジタリアン用のもの)の平安粥が分かれて提供されることも多い。

最近は寺廟をはしごしながら平安粥を食べ歩く人も少なくなく、ネット上にはそんな平安粥を食べれる場所をまとめた記事も見つかる。例えば上記の記事では宜蘭県の187箇所の各寺廟の場所、平安粥の提供日時(正月け何日まで提供されるか)、葷・素の提供の有無などが一覧表にされている。

台湾人はまとめ記事を作ることにかけては天才で、独自取材の上で個人のブログ上に公開されている「〇〇攻略」「〇〇懶人包(面倒臭がりな人のために必要な情報を簡単にまとめたもののこと。つまりは〇〇まとめ)」が多く、とても参考になることが多い。

そして何を隠そう自分達も3つの寺廟をはしごしたのであった。

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平安粥と並んでよく提供されるのが湯圓である。湯圓は日本でいう白玉団子のような食感と味で、僕たちが訪れた寺廟では生姜を効かせた甘い汁で煮たものが提供されていた。その形から家族円満を象徴するため、台湾では好んで食べられている。

2019年、新年は仕事もあって長期滞在はできず、初二(正月明け二日目)には帰国することになったが、それでもとても思い出深い新年になった。