Aoraki/Mt.cook village周辺には二つの大きな谷がある。Hooker valleyとTasman valleyである。今回はHooker valleyから入山し、2つの谷の中間尾根上の峠Ball Pass(2121m)を越えてTasman valleyに下山するというルートで歩いた。Tasman側からはHooker側から見ることのできないMt.CookのCaroline faceと、そこから北東へどこまでも続く雪山の連なりを一望することができ、アルピニズムの魅力を垣間見ることができる。
Ball Pass Crossing: Walking and tramping in Aoraki/Mount Cook National Park
- 2月20日
Christchurch郊外からヒッチハイク。1時間粘った末ようやく英国人女性の運転する車が止まってくれた。目的地は特に無いらしく、「夕日が綺麗な場所で一泊する予定なんだけど良い場所を知らない?」と言うので、プカキ湖をおすすめしておく。もちろんプカキ湖の夕日が多分綺麗だろうなぁと思ったからだけれど、そこを勧めた主要目的が「一気にマウントクック国立公園近くまで乗せてもらうことができるため」というゲスいものであったこともまた否めない。
結局途中の路上で美しい夕焼けが訪れたので、3人でのんびりと眺めたり写真を撮ったりした。そして結局テカポ湖畔で寝た。
- 2月21日
翌日も再び彼女達の車に乗せてもらってマウントクックまで向かった。途中通り過ぎたプカキ湖の湖面は絵具のようなミルキーブルーだった。
DOCオフィスでIntention Cardを書き、レンジャーに詳細なルート図と要注意箇所の写真を見せてもらってから出発。特に幕営地に予定していたPlaying Fieldsから尾根を乗越す箇所はルートを間違えると危険なので念入りにチェックした。
観光客が多く歩くHooker Vally Trackはフッカー湖の南端で終わる。今回はそこからフッカー湖の東岸に沿って更に進んでいく。
Golden Spaniard (Aciphylla aurea)
葉の先、花をつける場所、全てが尖っていて刺さると非常に痛い。ニュージーランドの中でMatagouriと並んで最も厄介な植物の一つ。
Hooker Valleyに別れを告げ、3歩進んでは2歩ずり落ちる蟻地獄のようなガリーを登った。眼下のHooker Lakeを挟んでMt. Sefton(3151m)、Mt. OlivieからMt. Sealy(2627m)へ続く稜線が見えている。
ガリーを越えると、本日の幕営地であるPlaying Field に到着。先行パーティーが一組既にテントを張っていた。せっかくなのでMt.Cookを背景に記念写真を撮ってもらった。
夕焼けに染まるMt.CookとHooker Valleyの源頭を見下ろす一等地にテントを張った。自分の中では史上最高の幕営地。
夕焼けから夕暮れへと移り行く山と谷と空を見ながら、ただただ綺麗だなぁと思った。
- 2月22日
Mt. Sefton(3151m)の夜明け。
朝起きるとHooker valleyは見事な雲海に包まれていた。
正面(写真中央少し左)のCopland Pass(2150m)を越えると西海岸に出ることができる。いつか行って見たい場所の一つ。
Lean Peak(2325m)~Edith Peak(2248m)~Raureka Peak(2333m)~La Perouse(3078m)
Mt. Annette(2235m)~Mt. Sealy(2627m)~ Mt. Massey(2436m)~ Mt. Darby(2531m)
出発。谷間に日が差し込むとともに雲海はやがて退却していった。
Lobelia macrodon
トラバースを続けるとやがて雪面に出る。ピッケルとアイゼンを念のためDOCの向かいにあるガイド会社でレンタルしておいたので危険を感じず進む。
ほどなくBall Pass(2121m)に到着して少し早い昼食タイム。
氷河を横切って尾根に取りつく。
尾根に乗るとTasman側の展望が一気に開ける。眼下にはTasman Lake。Tasman Glacierの退却によってその大きさを急激に増しているという。そして遥か向こうにはミルキーブルーの Lake Pukaki。
正面にThe Nuns Veil(2749m)を筆頭とするBuennet Mountains。左奥に続く谷はMurchison Glacierに通じる。
Mt.Cook(3724m)のCaroline Face
Caroline Glacier, Ball Glacier
Tasman Valley に降り切ってしまうと、あとは土砂を被ってお世辞にも綺麗とは言えない灰色の氷河に沿って、単調で退屈でかつ所々歩きにくいトラックが延々と続く。そして夕暮れ時にやっとのことで下山口の駐車場に到達した。Tasman Valley一帯にはハイキングコースがあるので、元々はハイキング客の車に乗せてもらって町まで帰ることを期待していた。しかしこんなに遅い時間になってしまうともう皆帰ってしまっただろう。そう思ってバックパックが肩に食い込むのを感じながら絶望的な気分で車道を20分くらい歩いていると、奇跡的に旅行中の大学生の一団の車が通りかかったのでMt. Cook Villageまで乗せてもらった。どうもありがとう。
- 参考
Ball Passの場所を地図上に示しておいた。後で知ったが、Ball Passの南東のピークKaitiaki Peak(2222m)も登れるようだ。