休学中の記録

夕暮れの奈良世界遺産地区を歩く

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奈良は一年中国内外からたくさんの旅行客を集める日本を代表する観光地だ。近年はインバウンド客の急増もあって昼は喧騒に満ちているが、日帰り観光客が去った夕方から夜にかけては昼の喧騒が嘘のような静けさを取り戻し、周りの景色や古跡、鹿の姿を愛でながらゆっくりとその魅力に浸ることができる。

今回はそんな夕方~夜の奈良の魅力を紹介しようと思う。

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奈良ホテルは1909年に「関西の迎賓館」として開業した日本を代表するクラシックホテルだ。中にはティーラウンジがあり、宿泊客でなくても優雅にアフタヌーンティーを楽しむことができる。夕方から夜になると、ホテルの中には暖色のオレンジ色の明かりがともり、とても素敵な雰囲気になる。午後の時間をゆっくり過ごしてみてはいかがだろうか。

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夕陽が落ちる時間帯に奈良県庁に移動する。展望抜群の奈良県庁屋上広場は17時半まで開放されている。2月中旬に訪れると、17時半はちょうど日の入りの時間帯で、ちょうど空が綺麗なグラデーションに染まる様子を楽しむことができた。

若草山から三笠山へと続く穏やかな山なみ、そして生駒山金剛山系に囲まれた奈良盆地の中に興福寺五重塔と中金堂のシルエットが浮かび上がる。遥か1300年前の昔から連綿と受け継がれてきた平城京の景色だ。

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夜になり、日帰り観光客がいなくなった奈良公園を散歩する。夕暮れ時の静かな奈良公園は散歩していてとても心地が良い。

さて、奈良公園では2月初旬から2月中旬にかけて、「奈良瑠璃絵」というイベントが開催され、公園各所がイルミネーションでライトアップされる。また、それに合わせて「夜参り提灯」というイベントが開催される。「夜参り提灯」とは一種のウォーキングツアーで、参加者が提灯を手に持ちながら、ガイドさんの案内のもといつもとは違った雰囲気の夜の世界遺産区域を歩く。出発地は春日野国際フォーラムで、東大寺コースと春日大社コースがある。

今回偶然このイベントに出くわし、せっかくの機会なので両方のツアーに参加することにした。

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まずは春日大社コースで、夜の参道を歩いて春日大社の南門まで向かう。境内はこの日は特別に20時半まで開いていて、500円で御本殿の夜間特別参拝も可能となっている。真っ暗な原生林に囲まれ、灯籠に照らされた幽玄な雰囲気の春日大社御本殿を参拝すれば忘れられない経験になるだろう。

参道ではガイドさんが色んな解説をしてくれるので、自分一人で回るよりも色んな知識を得ることができてとても面白い。

  • 春日大社の灯籠は、石の灯籠(参道に多い)が約1800、青銅の灯籠(本堂の回廊などに多い)が1200ほどの計3000ほどある。灯籠には様々な種類があるが、その多くは様々な産業の講に所属する人たちが共同で献灯したものであり、書かれた文字を見ることで当時栄えていた産業を窺い知ることができる。例えば「木綿」「和州」などと下部に書かれた灯籠があるが、こういったものを通して例えば「江戸時代に繊維業が奈良では栄えていたんだな」ということを想像することができる。
  • 参道沿いに多く見られるイチイカシ(一位樫)の木は「奈良市の木」となっている。幹周り3mを超える巨木が30本以上あり、市の天然記念物に指定されている。
  • 鹿は通常芝生やどんぐりを食べるが、冬の時期は芝生も枯れ、どんぐりも見つからない。そこで立ち上がって木の葉を食べる。雄の鹿は立ち上がると概ね2mくらいになるが、このため2m以下の木の葉は食べつくされ、そのラインより上の葉は青々と茂っている様子を見ることができる。これは「鹿の接触限界=deer line」と呼ばれている。また、低いところにあるのに鹿に食べられず残っている樹木もあるが、例えばそのうちの一つは馬酔木であり、名前の通り馬が食べるとふらつくくらいの「アセポトキシン」という毒素があり、鹿も嫌って食べないので残っている。

 こんな話を聞きながら歩くのも面白い。

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続いて東大寺コースに参加する。東大寺コースは奈良国立博物館の外観を見学したあと、南大門へと向かう。

特別にライトアップされた南大門の迫力には圧倒される。ガイドさん曰く、

  • 今の南大門は1203年に建築されたもので、その後800年以上倒れていない。
  • 柱は18本あり、全て直径1mほどの真っすぐな檜材で高さは20数mもある。今これだけ立派な柱を取ろうと思っても日本全国どこにもない。
  • 梁を突き抜ける「貫」を多用して構造を強化する「大仏様(だいぶつよう)」というとても強固な様式で建てられており、台風、地震でもびくともしない。

南大門は有名観光地なので、一度は見たことのある人も多いだろう。けれども、昼にしか来たことがない人は是非、日帰り観光客が帰った後の南大門も見てほしい。

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ガイドツアーは寄木作りの金剛力士像や、お水取りの松明の説明をしながら、大仏殿まで向かう。今回はイベントに合わせて大仏殿正面の桟唐戸が開かれ、そこから大仏さまのお顔を拝めるような特別仕様になっていた。

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 最後に瑠璃絵のライトアップを楽しみ、帰路につく。瑠璃絵も良いけど、自分は燈花会の暖色系のライトアップの方が好きだなと思う。もう20年ほど訪れていないけれど、思い出の場所でもあるし、是非夏にはまた訪れようと思う。

...奈良はとても素晴らしい場所なので、時間が許せば1泊でも滞在し、素敵な雰囲気を存分に味わうことを強くお勧めしたい。