休学中の記録

桂林のタワーカルストを巡る旅(興坪郊外のサイクリングと老寨山登山)

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高校地理の授業でカルスト地形の勉強をしたことを覚えている人はどれくらいいるだろうか。カルスト地形には「ドリーネ」や「ウバーレ」などがあって、風化してできた土壌は「テラロッサ」で...という内容なのだが、とにかく用語が覚えにくい。そもそも「ドリーネ」とは何語なんだろうか...名前から地形のイメージが湧きにくいんだよなぁと思っていた。

一方、これらの用語の中で唯一わかりやすいのが「タワーカルスト」だった。形が想像しやすいし、例として資料集に載っている桂林の写真は一度見ると忘れられない強烈なインパクトを持っていた。 一度はこの景色を自分の目で見てみたいなぁと思ったのをよく覚えている。

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漓江から眺める老寨山の山容。頂上からの展望は絶景だ。

2017年2月にようやくその願いが叶った。友人とハノイを旅行した後、国境を越えて貴州のトン族集落を訪れ、その後桂林へ足を伸ばした。老寨山の山頂から眺めるタワーカルストの連なりはお世辞抜きに絶景で、山頂に1時間以上滞在して心ゆくまでその風景を眺めた。

自転車で巡るタワーカルストの風景

まずは高鉄で貴州の榕江駅から陽朔駅まで。そこから景区の核心部となる興坪の町までバスで移動する。

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興坪の町で宿にチェックインし、自転車を借り、漓江の河岸に出ると早速たくさんのタワーカルストが出迎えてくれる。

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生活物資を積んだ素朴な船が興坪と対岸の村を結んでいる。まずはこの船に乗って対岸を探検してみることにした。

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辺りでは金柑のような果物がたくさん作られていた。

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タワーカルストの間を縫って農地が開かれている。

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急な坂道を登っていくと展望の良い場所に出た。

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渡船に乗って右岸に戻る。渡し場は何ヶ所かあって、小さな船が両岸を往復している。

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渡船の上から見る夕方の静かな景色には心が安らぐ。

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右岸に戻ると川に沿って綺麗に整備された道が続いていた。鼻歌を歌いながらのんびりと興坪の町まで自転車を漕いだ。

老寨山と興坪の裏山探検

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翌日は徒歩で興坪の周りを探検する。老寨山の急登を登り、たどりついた頂上の岩場からの景色は素晴らしかった。高さが見事に揃ったタワーカルストがどこまでも続いている。もともとあった石灰岩台地を、気の遠くなるような時間をかけて雨水が浸蝕して現在の景色が作り上げられた。

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興坪の町に戻り、今度は町の外れから南側の裏山へ続く道を歩いていく。周りにはところどころに簡易的な作業小屋が作られ、農地が開かれ、素朴な石積みが築かれていた。

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そんなでこぼこ道を歩き続けるとやがて峠を越え、漓江の川面が見えた。

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日の入り時刻が近づき、空が刻一刻と暗くなっていた。夜の真っ暗闇をまた峠を越えて町まで戻るのはさすがに気が引けた。そこで河岸で筏を係留しているお兄さんに声をかけ、値段交渉をして100元で興坪の町まで連れて行ってもらうことにした。痛い出費だが、観光船が去った時間帯に、筏の上から開放的な景色を独り占めできることを考えると悪い選択肢ではなかった。

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筏には発動機が付けられていて、思ったより遥かに速いスピードで発進した。

 

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風を切って進むのも悪くないが、せっかくなので少し速度を落としてゆっくり航行してもらう。恐る恐る筏の上に立つと、また違った視点が得られた。船頭のお兄さんは「学校には船で通ったんだ」と、「この川は小さい頃からの遊び場なんだ」と、確かそんな話をしていたと思う。こんな場所で過ごす少年時代はきっと楽しいだろうなと思った。

...翌朝、高鉄の陽朔駅から深圳まで向かった。乗車時間はわずか2時間半ほどでとても静かで快適な乗車だった。高鉄の開通が中国の旅をものすごいスピードで変化させている。

桂林に向かう前にはベトナムで「海の桂林」とも呼ばれるハロン湾を訪れたので、期せずしてタワーカルスト三昧の旅になった。