八丈島を歩いていると、本土ではなかなか出会えない植物にたくさん出会えます。植栽されているハイビスカスや椰子の木は亜熱帯ムードを演出してくれますし、三原山にはオオタニワタリ、リュウビンタイ、ヒカゲヘゴなど大型シダ植物が自生しています。
それでは今回観察した植物を備忘録代わりに記録していこうと思います。
ヒカゲヘゴ Cyathea lepifera
八丈島は木性シダ「ヘゴ」の自生北限地になっています。三原山の森ではその中でも特に大きく成長するヒカゲヘゴがたくさん見られました。ヒカゲヘゴの上部には新芽がありますが、この新芽は食用にもなるそうです。試しにネットで検索してみると、沖縄の人が実際に調理したブログがいくつか出てきました。いつか是非試してみたいものです。
個人的に木性シダと言えば思い出すのはニュージーランド北島・タラナキ山の多雨林です。タラナキ山でも同じくヘゴ属のSmith's Tree Fern(Cyathea smithii、下写真)がたくさん生い茂っていたのが印象的なのですが、八丈島のヘゴの森もそれに負けず綺麗でした。
オオタニワタリ Asplenium antiquum
オオタニワタリは大きな葉を放射状に広げる特徴的な着生シダで、八丈植物公園で多く見られるほか、民家の軒先に植えられているのも目にすることがあります。自然の中では意外と見つけられないのですが、中之郷の裏見ヶ滝周辺にはいくつか株が見られました。根元の開口部に落ち葉や木の枝などが溜まっていますが、これが腐葉土として養分を供給すると言われています。
リュウビンタイ Angiopteris lygodiifolia
三原山の森の中で巨大なリュウビンタイを見つけました。野生のものはさすが塊根の大きさと迫力が違います。以前、国立台湾大学で見た蘭嶼觀音座蓮(写真下、Angiopteris palmiformis )に似ているなぁと思ったらやっぱり同属なんですね。
マメヅタ Lemmaphyllum microphyllum
降水量の多い八丈島では、山中のみならず集落の石垣など至る所でシダ植物の姿を目にします。宿泊先の民宿の石垣にはマメヅタがたくさん着生していました。丸い栄養葉と細長い胞子葉が特徴的で、雨に濡れて生き生きしているのが印象的でした。
アオノクマタケラン Alpinia intermedia
八丈島の林床に生える代表的な植物で、初夏には白と桃色の美しい花を咲かせ、秋には赤い実がよく目につきます。花や葉の外見がラン科植物によく似ているので、和名に「ラン」がつきますが、実はショウガ科の植物だそうです。土や落ち葉をかき分けて根元を見ると、なるほど、確かにショウガのような根茎が発達していました。
八丈島の集落は大きく分けて「坂下」「坂上」に分かれますが、特に坂上の中之郷地区は雰囲気が気に入りました。島内散歩の合間に、古い石垣と亜熱帯植物に囲まれた古民家カフェでゆっくり時間を過ごしました。
海岸に出ると、植物は伊豆半島の海岸や関東の太平洋岸との共通種が多い印象です。八丈島は本土から随分遠いところにある離島ですが、それでも植物は波や風などによって運ばれてくるのでしょう。
イソギク Chrysanthemum pacificum
11月の八丈島の海岸はイソギクが至るところに花を咲かせていました。イソギクは伊豆半島、三浦半島、房総半島など関東の太平洋岸一体に分布していますが、八丈島の黒々とした玄武岩にはとりわけ色が映えて綺麗でした。
ハマアザミ Cirsium maritimum
八丈富士にはハチジョウアザミ、海岸には棘の多いハマアザミが咲いていました。
ハマボッス Lysimachia mauritiana
南原千畳敷にて撮影しました。肉厚の葉はいかにも海岸植物という感じがします。
トベラ Pittosporum tobira
海岸沿いの植栽として多く見られました。秋につける実はやがてはじけ、中の粘着質の赤い種が露出するようになって色鮮やかです(下写真。下田の爪木崎にて)
アシタバ Angelica keiskei
伊豆諸島のソウルフードの一つです。天ぷらにしたりお浸しにしたりして食べることが一般的ですが、個人的には若い葉を見つけたら少し摘んで生食するのも野性的な感じがして好きです。島のあちこちに自生しているのを見かけますが、それ以外に八丈島では農園での栽培も盛んと聞きました。
フェニックスロベレニー Phonix rupicola
カフェの軒先には島民が「ロべ」と呼んで親しんでいる木がたくさん植えられていました。葉っぱが贈答品の装飾などに使われるということで生産が盛んで、八丈島だけで全国シェアは9割以上を占めるというので驚きです。
シモダマイマイ Euhadra peliomphala simodae
雨の日の朝、シモダマイマイが歩道をゆっくりと這っているところに遭遇しました。同じシモダマイマイでも伊豆諸島の各島で随分外見が異なるようです。
こちらははっきりとした自信はありませんが、おそらくクロマダラソテツシジミだと思います。
八丈島は「園芸の島」で海外の熱帯・亜熱帯植物がたくさん持ち込まれています。八丈植物公園では南洋杉やカナリー椰子などの植物も楽しめます。
こちらはキバナシュクシャでしょうか。ヒマラヤ原産の植物だそうです。
こんな調子で今回も色々な動植物を観察しました。今度は花の季節に神津島など他の島にも足を伸ばしたいですね。