日本の都道府県ごと、外国人の国籍ごとにインバウンドの訪問傾向を分析する企画の第2弾。前回の東アジア編に続き、東南アジア編についてまとめてみた。
東アジア編はこちら↓
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タイ人
全外国人宿泊者に占めるタイ人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.3%~8.3%まで開きがあった。四国地方や南九州での割合は低い一方、富士五胡を擁する山梨県や、日光を擁する栃木県の割合が高い。日光は欧米人に人気が高い国立公園であるが、欧米の他にタイからも多く誘客しているのが特徴的であり、環境省の下記資料でも指摘されているところである。
http://kanto.env.go.jp/files/mankitsu_second_siryo2.pdf
群馬の宝川温泉、岐阜の高山などもタイ人に人気のスポットのようである。中部地方や、北関東~南東北にかけて周遊ルートが確立されつつあるような印象を受ける。
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マレーシア人
全外国人宿泊者に占めるマレーシア人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.1%~4.5%まで開きがあった。その中で目立って多かったのは、北海道である。
エアアジアのクアラルンプール新千歳便の就航の後押しも受け、2016年度にマレーシアからの北海道訪問者は急増している。
(北海道のインバウンド実態については、毎年詳細な統計が整備されており、北海道内でどの地域、どの町に外国人が訪れているのかというところまで分析が可能になっている。)
また、岐阜、富山についても割合が高い。中部地方における割合が高いのは、東南アジア諸国に共通している。
全外国人宿泊者に占めるインドネシア人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.05%~3.75%まで開きがあった。その中で目立って多かったのは、富山県、長野県である。このことから立山黒部アルペンルートの人気が高いことがうかがえるが、富山県について更に内訳をみると、夏季シーズンはほとんど宿泊が見られないものの、4月、5月の2ヶ月の宿泊者数が一年の半分以上を占めていた。したがって、特に「雪の大谷」の人気が高いということが示唆される。
なお、インドネシアはムスリムが人口の約9割を占める一方で、実際に訪日するのは華僑系の人達が多い。華僑系の人たちの宗教としてはキリスト教や仏教が多く、我々が「インドネシア」と聞いた時に想起する人たちとは違った人達が日本に来ている可能性が高い。今後さらなる誘客を図るには、ムスリム系の人たち(ブリプミと呼ばれる人達)に対するプロモーションも必要になってくるが、例えば岐阜県や高山市などは下記のような取り組みを行っている。
全外国人宿泊者に占めるシンガポール人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.5%~4.9%まで開きがあった。その中で特に多かったのは、北海道及び中部北陸地方であった。
なお、2017年にはシルクエアのシンガポール広島便が就航しており、今後中国地方など西日本への誘客も期待したいところである。シルクエアのネットワークを生かして例えばインドネシア等からシンガポール経由で西日本にアクセスすることも可能になるので、今後新たな旅客の流れを作ることができると面白いだろう。
全外国人宿泊者に占めるベトナム人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.04%~2.5%まで開きがあった。他の東南アジア諸国とは異なり北海道については割合、数量共にそれほど高くないのが印象的である。様々な調査において北海道への訪問意向は高く出ているようなので、北海道はベトナム人からの需要を吸収しきれていない可能性が高い。
なお、割合で高く出ている福島県については、2013年度からベトナムからのチャーター便が継続的に福島空港へ就航していることも関係していると考えられる。
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/chiji/kaiken20170710.html
愛知県をはじめとする東海圏については、ベトナムへの進出企業が多いため、観光目的のほかに企業研修などの訪問が多いのではないかと推察するが、実際のところどうなのだろうか。
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フィリピン人
全外国人宿泊者に占めるフィリピン人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.04%~3.3%まで開きがあった。その中で割合が高かったのは、秋田、富山、大阪であった。
何故秋田なのかと思って調べてみたところ、秋田市にある女子修道院にある聖母マリア像がフィリピン人に人気という情報が見つかった。国民の多くがカトリック教徒のためカトリック施設を訪れる需要は一定程度あるという情報もあり、例えば世界遺産登録を目指す長崎・天草のカトリック関連遺産がどの程度フィリピン人に訴求力を持つコンテンツなのかは気になるところ。
フィリピンからの観光客数も急速に伸びているのだが、一方でフィリピン人観光客の誘致に特に注力しているという自治体の情報はあまり見つからなかったのは意外であった。
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インド人
全外国人宿泊者に占めるインド人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.04%~2.25%まで開きがあった。欧米人からの人気が高い広島において比較的割合が高く出ているのが印象的である。
基本的にゴールデンルートを訪問する人が多いが、訪問日数が比較的長いためゴールデンルート+日光・広島を訪れる人が多いのが割合に反映されているのかもしれない。
インドと日本の観光交流は首脳間をはじめ外交レベルで推進されているところなので、今後の伸びに期待。
- 【備考】
なお、注意が必要なのは、以上の議論はあくまで割合ベースの話であるということである。例えば上記で「インドネシアにおいて富山県が人気のようである」という話をした時、それは「インドネシア人の富山県訪問数が絶対的に多い」ということではなく、あくまで「他の国籍の人たちに比べて、インドネシア人は富山県に訪れる割合が相対的に高い」ということしか意味しない。実際、絶対数で議論すると、富山県におけるインドネシア人宿泊者は最も多かった5月でも2500人程度にすぎないのである。
今回割合で議論したのは、そうすることで各国の人々にとって特に魅力に映る観光地を理解することができ、今後のプロモーションに活かすことができるからである。宿泊者の絶対数でとらえた場合、どの国からの観光客についても東京、大阪、北海道などがハイライトされるに過ぎず、参考になるデータとはならないことが多い。