休学中の記録

桜島のある風景

高校2年生の時、友人と九州を一緒に旅行しました。青春18きっぷを使った旅で、神戸港から夜行フェリーで大分港に入港し、大分からは阿蘇、人吉、鹿児島、枕崎と旅をつづけました。

私も友人も個人主義的なところがあって、旅の始まりと終わりの数日間は一緒に行動したのですが、鹿児島に着いてからの1日間はそれぞれの興味にしたがって別行動にしました。友人は確か日南方面の鉄道の乗りつぶしの旅に出かけ、私はその間、開聞岳山麓を歩き回っていました。

そしてその日、1日の行程を終えて1人で宿泊したのが桜島ユースホステルでした。設備は古く、私が着いた時にはほかに宿泊客もおらず閑古鳥が鳴いていましたが、それでもやがて同じ部屋に3人の宿泊者が続々と到着すると急ににぎやかになりました。

1人目は世界一周旅行中のオランダ人で、シベリア鉄道などを乗りついで日本にやってきたバックパッカー

そして2人目はケニア出身で今は日本で英語教師をやっているという人で、3人目は滋賀県出身で九州を旅行中の大学生でした。

これまでそうした旅宿の雰囲気に触れたことがなかったので、私はつい興奮して積極的に旅人達と交流を図りました。

姶良カルデラの外輪山と鹿児島市

地理の授業の受け売りで、頼まれてもいないのに姶良カルデラ錦江湾の成因をブロークンな英語でケニア人に解説し、「温泉には入らない」というオランダ人に「それは非常にもったいないから入った方がよい」ということをお節介に力説してまわりました。

今から考えると恥ずかしいですが、何事も初めての体験というのは新鮮でワクワクするもので、とにかく楽しかったのだと思います。

夏の九州の日は長く、夕立の後には夕日に照らされた桜島の荒々しい山肌が姿を見せました。やがて日が沈むと対岸の鹿児島市街の夜景が綺麗でした。

ユースホステルは港から坂道を上った高台に位置していて、部屋の窓から身を乗り出すとなかなか良いアングルの眺めが楽しめるのでした。

さて先日、12年ぶりに桜島に上陸しました。青春の旅の記憶をたどって、桜島ユースホステルのあった場所も訪れてみましたが、残念ながら2020年に廃業してしまったということでした。

しんみりとした気分になりましたが、気を取り直してレンタカーで思い出の山・桜島を色々な角度から眺めることにしました。

桜島はどこから見ても絵になりましたが、一番綺麗だと感じたのは海潟漁港でしょうか。目の前で桜島がドーンと噴煙を高くあげるなか、穏やかで透き通った青い海面に釣り糸を垂らす人々の姿が何とも気持ちよさそうでした。

錦江湾に浮かび、噴煙を上げる桜島を飽きるまで眺め、共同浴場で風呂を浴び、一帯で養殖されているカンパチを食べてから帰途につきました。

海潟漁港から眺める桜島

カンパチ丼