休学中の記録

息子との台北散歩の記録

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息子が歩けるようになってから、天気の良い日はよく散歩に連れていくようになりました。最寄りのバス停でバスに乗り、台北市内の各地の公園へ出かけています。

最近とみに乗り物にはまり出した息子は、特にバスが大好きで、バスが目に入るたびに指さして「GO!GO!」と叫びます*1。「GO!GO!」と興奮する息子の姿を微笑ましく眺めながら、いつもバスに乗りこみます。

さて、台北市内には緑豊かな公園がたくさんあります。その中でも特にありのままの自然に触れられる場所として、よく大安区の富陽自然生態公園に行きます。

公園に着くと入口にベビーカーを停め、木蔭の下の遊歩道を息子と手をつないで歩きます。中に一歩足を踏み入れると空気感が一変します。四方は鬱蒼とした緑に取り囲まれ、様々な蝉や鳥の鳴き声が響き渡ります。

ここは公園として整備される前、軍事用地(弾薬庫)として使われていたそうです。そして、そのためにかえって開発の手が及ばず、台北盆地一帯の原生的な自然が残されているのだそうです。

遊歩道を一緒に歩いていると様々な生き物に出会います。

蝶の姿が見えると、「ちょうちょう、ちょうちょう、なのはにとまれ~」と歌ってあげます。「ここで見られる蝶は、菜の花畑の蝶ではないんだけどな」と心の中で突っ込みつつ、「まぁ細かいことはいいか」と思って歌っています。

公園内ではクロアゲハやシロオビアゲハが目の前を横切ったり、タイワンミスジが頭上からひらひらと下りてきたり、オオルリモンアゲハが吸水していたりします。

亜熱帯の蝶は華麗で見ごたえがあって、私も童心にかえって楽しんでいます。

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湿地ではトンボがたくさん飛んでいて、今度は「とんぼのめがねは水色めがね~」と歌います。今の時期、この公園では水色のとんぼは見かけませんが、赤いオオハラビロトンボや、翅の光沢が芸術的なアカスジベッコウトンボなど、日本ではなかなか見られない種類のトンボがたくさん飛んでいます。

最近読んでいる絵本には、蝶やトンボがたくさん出てきます。今では、息子は絵本の中の蝶やトンボを見つけるたびに、毎回必ず指さして教えてくれるようになりました。そして手をたたいて歌を歌うよう繰り返しリクエストしてくるので、気が済むまで「ちょうちょう、ちょうちょう~」「とんぼのめがねは~」と何度も歌ってあげます。

そんな時間を何よりも幸せに感じます。

公園の話に戻りますが、少し急な石の階段(おそらく弾薬庫時代のものをそのまま活用したもの)を登ると、木蔭の道とはいえ息子も私も汗をたくさんかきます。登り終えて一息つくと、あたりは蝉の大合唱です。「あー、夏だなぁ」という気持ちに浸ります。

ジー....」と「シャンシャンシャンシャン....」と蝉の鳴き声を真似してみると、時々息子も一緒に真似してくれます。

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日本にいる時、蝉の合唱というものは極東の島国・日本に固有の夏の風物詩なのだろうと勝手に思っていました。でも台湾に来て、こちらでも梅雨明けにはたくさんの蝉が日本と同じ、いやもしかするとそれ以上の大音量で合唱することを知りました。

息子が毎日この世界を探索し、一生懸命色んなものを吸収しているのと同時に、私も息子のおかげで、また少し世界が広がっています。

多くの人がそうだと思いますが、私は自分が1歳の時の記憶は全くありません。

だから彼が大きくなった時、1歳の時に父親に連れられて台北の公園を散歩したことや、絵本を読んでもらったこと、歌を歌ってもらったことなどは、きっと忘却の彼方にあるに違いありません。

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でも仮に「取り出せる記憶」としては消えてしまうとしても、これから人生で、何らかの目に見えない支えとして残ってくれると良いなと思います。

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*1:私はよく息子に「バスに乗って出かけよう。GO!GO!」という歌を歌ってあげていたのですが、どうやらいつのまにか息子の中で「バス=GO!GO!」として認識するようになったようです。