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韓国人観光客の減少がもたらす大きな影響について

記事の概要

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日韓関係の悪化に伴い、韓国人観光客の減少の影響が出始めている。今回の記事ではその影響を考察してみることにする。要旨としては下記の通り。

  • 日韓関係の悪化に伴う訪日客の減少がもたらす影響には地域差がある。
  • 特に韓国人観光客への依存度が高い九州各県や山口、鳥取などが深刻な影響を受けているほか、大阪、北海道等も大きな影響を受けているようだ。
  • 一方で東北地方はじめ東日本での影響は相対的に見て小さい。好調な中国・東南アジア・欧米等からの訪日客の増加に伴い、全体訪日数が昨年比で見ても増加している地域も多い。
  • このような地域差はあるものの、全体としてこれまで訪日客の4分の1を占めており、更に地方部への訪問が多かった韓国人観光客の激減が日本にとって大きな打撃となるのは間違いないだろう。

宿泊者数から見る韓国人観光客への依存度の地域性

昨日日本政府観光局(JNTO)により発表された速報値によると、2019年8月の韓国からの訪日数は昨年比48%減で30万8700人となった。韓国人訪日客の急減は各地で大きな影響を与えているが、その中で特に打撃を受けている地域はどこだろうか。

f:id:toyojapan1:20190917235037p:plain上図は筆者が観光庁『宿泊旅行統計』のデータをもとに、都道府県ごとに韓国人宿泊者数が全外国人宿泊者数に占める割合(2018年)を塗り分けたものである。一目瞭然だが、九州・沖縄・山口県鳥取県などで韓国人観光客への依存度が高かったことがわかる。また、北海道や大阪、沖縄などでも割合が比較的高くなっているのがわかるだろうか。これらの地域では最近2ヶ月ほどで続々と苦境が伝えられている。以下に関連する報道を集めてみた。

九州

2018年の数字で韓国人観光客への依存度が最も高かったのは大分県で、韓国人宿泊者が全外国人宿泊者に占める割合は約59%にのぼった。このため今夏以降の韓国人旅行者減少で大きな打撃を受けている。例えば上記9月12日の西日本新聞は湯布院や別府等の悲鳴を報道している。韓国の中秋節連休に入っても客入りが全然ダメなのだという。

朝日新聞の報道でも福岡や別府の苦境が伝えられている。

対馬は今回の関係悪化で大打撃を受けた代表的な地域である。上記9月17日の日本経済新聞が報じたところによると、救済策として約1億円の補正予算が組まれるという。

鳥取

上記8月1日の日本海新聞の報道によると、鳥取県では特に団体客のキャンセルが目立ち、交流事業も中止になるなど大きな影響が出ているという。

また、9月12日にNHKが報じたところによると、これまで鳥取県のインバウンドを牽引してきた米子ソウル便が10月1日から運休に追い込まれるという。

聯合ニュースによると、韓国の東海から境港を結んでいるDBSクルーズフェリーの乗客は7月に昨年比71.7%減を記録したという。大山・境港・松江等において影響が予想される。

山口

「関釜フェリー」乗客56%減 中国新聞9月12日

9月12日の中国新聞記事によると、下関と釜山を結ぶ関釜フェリーの乗客は半分以下となり、韓国人乗客の減少幅は8月に昨年比66%減となっている。

フェリー乗客減 下関、日韓関係悪化影響か

山口県では下関をはじめとする県西部の観光における打撃が大きい。

北海道

九州などに比べると割合が相対的に低いとはいえ、北海道も韓国人観光客が入域数で約4分の1、宿泊数でも約5分の1を占めていたため、影響は免れない。札幌、小樽、登別などの観光施設が影響を受けているようだ。

大阪

もともと韓国人が訪日する際に最も利用が多かった空港は関西国際空港であった。このため、大阪も今回の日韓対立で大きな影響を受けている。9月以降の予約状況は更に厳しいという声もあり、今後の動向が懸念される。色々な声を聞いていると、梅田などキタの影響は比較的軽微な一方、道頓堀はじめミナミでは影響が特に大きいという。

沖縄

沖縄では、週70便あった航空便が週35便程度まで減便される見込みであり、もともと秋から冬への訪問が多かった韓国人観光客が急減することによる影響が懸念されている。今後玉城知事によるトップセールスも計画されているという。

東日本

一方、先ほどの図を見ていただけるとわかるように、東北地方をはじめ東日本では韓国人観光客への依存度が相対的に低い。東北地方では台湾や中国などからの観光客がインバウンドの大きな割合を占めている。中国からの訪日客数は今年度に入ってからも増加が続いており、8月には初めて単月で100万人を超えるなど順調に推移していることもあってか、東日本から今回「大きな影響があった」という声はあまり聞こえてこない。筆者が各地方新聞の記事を確認したところ、ソウル青森便の利用率低下が報道されていたが、それ以外の大きな報道は見つからなかった。

結論

このように韓国人観光客の減少がもたらす影響には地域差があるが、日本全体として見るとやはり打撃は計り知れない。2018年には韓国から日本に750万人が訪れ、インバウンド全体の約4分の1を占めていた。しかもその多くがリピーターで、大都市のみならず西日本を中心に地方部にも多く訪れているのが特徴だった。このため、韓国人観光客はいわゆる地方創生、地方経済の活性化への貢献という意味でも重要な役割を担っていた。

それが、今回の日韓対立によって地方便の大幅な運休、減便が続いている。「観光による地方創生」というシナリオが大きく影響を受けたのは否定ができないのではないだろうか。