休学中の記録

インバウンド統計を地図上に可視化してみた(宿泊旅行統計・欧州編)

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日本の都道府県ごと、外国人の国籍ごとにインバウンドの訪問傾向を分析する企画の第3弾。第1回の東アジア編、第2回の東南アジア編に続いて欧州からの訪日観光客についてまとめてみた。

可視化にあたっての考え方は下記の記事を参照のこと。

それではさっそく本題に入る。

  •  イタリア人

     

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全外国人宿泊者に占めるイタリア人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.04%~2.8%まで開きがあった。その中で特に割合が高かったのは石川県、京都府広島県岐阜県であり、和歌山県が高く出ているのも特徴的である。金沢、京都、高山、高野山熊野古道、広島など日本の歴史・伝統文化を感じられる場所に興味を持って訪れる観光客が相対的に多いことを物語っているのかもしれない。

  • フランス人

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全外国人宿泊者に占めるフランス人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.1%~4.8%まで開きがあった。特に多かったのは岡山県広島県島根県などの中国地方で、それに加えて徳島県京都府奈良県、栃木県でも比較的高い割合となっている。

瀬戸内は東京・関西地区に続いてフランス語のガイドブック「Petit Fute」も発行され、フランス人に人気のエリアであるように思われる。

また、祖谷を擁する徳島県は、香港からの観光客が多いことは先の東アジア編で触れたが、欧州ではフランス人の訪問数が最も多いようである。

  • ドイツ人

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全外国人宿泊者に占めるドイツ人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.15%~3.3%まで開きがあった。特に割合が高かったのは広島県秋田県で、続いて関東近郊県の割合が高かった。秋田県の割合が高いのは、以下リンクの記述によると風力発電関連でドイツからのビジネス客が多いからだという。

秋田県のインバウント現状把握調査(後編)

  • イギリス人

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全外国人宿泊者に占めるイギリス人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.21%~4.65%まで開きがあった。訪問地域としてゴールデンルート+日光・広島の傾向が他国より強く出ているように見える。東京、京都、広島の間の都道府県の割合もそれほど強く出ていないので、Japan Rail Passを使って新幹線で上記3都市間を一気に移動する、というようなパターンも他国と比べて比較的多いのかもしれない。

  • スペイン人

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全外国人宿泊者に占めるスペイン人宿泊者の割合は、都道府県毎に約0.03%~3.3%まで開きがあった。割合の分布傾向としては京都府岐阜県広島県が高く出る点で前述のイタリア人とも似ているが、出雲大社足立美術館を擁する島根県が高く出ているのも特徴である。

島根県で具体的にどういった観光地やコンテンツが人気なのかは情報が掴めなかったが、島根県はスペインを今後重点市場と位置付けて取り組みを強化しても良いように思われる。

  •  【備考】

なお、注意が必要なのは、以上の議論はあくまで割合ベースの話であるということである。例えば上記で「スペイン人において島根県が人気のようである」という話をした時、それは「スペイン人の島根県訪問数が絶対的に多い」ということではなく、あくまで「他の国籍の人たちに比べて、スペイン人は島根県に訪れる割合が相対的に高い」ということしか意味しない。実際、絶対数で議論すると、島根県におけるスペイン人宿泊者数は1年間で1450人程度にすぎないのである。

今回割合で議論したのは、そうすることで各国の人々にとって特に魅力に映る観光地を理解することができ、今後のプロモーションに活かすことができるからである。宿泊者の絶対数でとらえた場合、どの国からの観光客についても東京、大阪、京都などがハイライトされるに過ぎず、参考になるデータとはならないことが多い。