休学中の記録

伊豆諸島の船旅(東京ー三宅島ー御蔵島ー八丈島航路)

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私は山が好きなので東京に来てからは東北や信州に足を延ばすことが多いです。とはいえ寒いのは嫌いで、秋から冬にかけては太平洋側に足がのびがちです。この時期、三浦半島や真鶴、伊豆半島などお気に入りの行き先はたくさんありますが、何といっても特におすすめなのは伊豆諸島です。

伊豆諸島には飛行機で行ける島もありますが、私はいつも東海汽船の大型客船(さるびあ丸/橘丸)に乗ります。多少残業をしても22時台に浜松町の竹芝桟橋を出発する船には余裕を持って乗り込めますし、甲板で東京都心の夜景を見ながらビールでも飲んで、気分上々で横になると、翌朝には島に着いているのは本当に素晴らしいなぁと思います。

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さて今回は東京から三宅島、御蔵島を経由して八丈島まで10時間かけて航行する「橘丸」に乗りました。雑魚寝の二等船室ですが乗り心地は悪くなく、夜は比較的心地よい眠りに包まれました。そして朝起きて甲板に出ると、太平洋の荒波の中に八丈富士と八丈小島が並んでいました。大きく揺れる甲板の手すりにしがみつきながら、朝日に照らされる島影を見ていると、だんだん高揚感に包まれました。

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八丈島への上陸が近づくと、いよいよ八丈富士の姿が大きくなってきます。瀬戸内の穏やかな海に慣れている私にとって、この太平洋の海の色と波の高さ、そして火山島の迫力にはやはり圧倒されます。八丈島は「流人の島」として知られますが、確かにここに流されたら容易に脱出はできないだろうな、という気がします。

さて、上陸してからのことはまた機会を改めて書くとして、今度は帰りの船です。帰りの船は夜行ではなく、朝9時40分に八丈島を出港して、東京竹芝には19時50分に着きます。島での滞在時間をできるだけ長くしたい場合は、帰り飛行機を使う選択肢もありますが、船旅は船旅で大海原の風景を存分に楽しむことができます。

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登龍峠展望台から見た橘丸の入港シーン。

出港を前に甲板から島をながめると、たとえ短い時間であっても時間を過ごした島への愛着から少しセンチメンタルな気分になります。港には見送りの人もチラホラ見られます。

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八丈島を出港すると、三原山の断崖絶壁が目に入ります。やがてだんだん島が小さくなっていき、島に向かって手を振っていた人たちもやがて船内へ戻っていきました。

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八丈島を出発してから3時間ほどで次の島の御蔵島に着きます。御蔵島の南側は、最高峰の御山851mから急斜面がそのまま海まで落ち込んでいます。「取りつく島もない」という言葉がありますが、御蔵島のような島では、島はあってもそう簡単には取り付くことはできません。実際私が乗った時は、行きの船も帰りの船も波が高くて御蔵島には接岸できず、通過することになりました。

伊豆諸島では「一島二港方式」を採用している島が多いです。つまりメインの港とは別に島の反対側にサブの港を作ることで、風向きに関わらず接岸できるようにしています。例えば伊豆大島の岡田港と元町港、八丈島の底土港と八重根港、といったような具合ですが、御蔵島のような地形では港を一つ作るのがやっとです。そして結果として風や波による欠航率が高くなっているようです。

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御蔵島の次に寄港するのは三宅島です。三宅島の雄山は裾野が長く、御蔵島八丈島に比べると随分穏やかな印象を与えます。とはいえ全島避難をもたらした2000年の噴火の記憶は新しいですし、山頂部にはその際に深さ500mもの巨大なカルデラがあるそうです。

三宅島では予想以上にたくさんの乗客が乗船し、船内が急に賑やかになりました。

三宅島を過ぎるとあとは本土を目指してひたすら航行します。三宅島を過ぎるとさすがに時間を持て余すようになってきました。10時間の船旅ですから、本なりiPadなり暇つぶしの道具はやっぱり必要ですが、そこまで気が回っていませんでした。外も少し寒くなってきて甲板も長居できませんし、おとなしく船室で仮眠を取ることにしました。

昼寝から目が覚めると、船は伊豆大島沖を航行していました。ちょうど夕陽の時間帯で、伊豆大島の奥にオレンジ色の太陽が沈んでいきました。もっと天気が良ければ丹沢や富士山も見えるのではないかな、と思いますが、今回は見えませんでした。

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外が暗くなると月が綺麗に見えるようになりました。羽田空港の飛行機を眺めていると、やがてレインボーブリッジと都心の高層ビル群が近づいてきます。高層ビルは一棟だけでも島の人口を越えるような人数を収納できるのではないかと思いますが、そんなビルが何百棟も林立している東京という街は本当に信じられないくらい巨大なものに感じます。

そしてレインボーブリッジをくぐって、ゆっくり湾内を航行した橘丸は竹芝港に着きました。荷物をまとめて下船する時、船内にかかっていた音楽が妙に耳に残ってしばらく頭から離れませんでした。あーついに戻ってきたな、という気がしましたが、帰ってきたその時から、次はいつ、どこの島に行こうと考えている自分がいるのに気づきます。名残惜しさから港の「アンテナショップ 東京愛らんど」に立ち寄ると、つい土産物を買い足してしまいました。

...手軽に非日常を味わえる伊豆諸島の船旅はとても好きですし、また季節を変えて、コロナウイルス感染者が落ち着いた頃を見計らって東海汽船を利用しようと思います。