休学中の記録

八丈富士登山と植物観察

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八丈富士(標高854m)は八丈島の西部に聳える活火山で、伊豆諸島の最高峰です。山頂部には直径400mほどの巨大な火口があり、360度の展望を楽しみながら一周1時間ほどのお鉢巡りを楽しむことができます。今回は植物観察をしながら八丈富士の登山道を歩きました。

登山道沿いの植物

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八丈富士の秀麗な山容はどこから見ても美しく、登高欲をそそられます。植物公園を観光してから午後に登山を開始しました。

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ハチジョウアキノキリンソウ Solidago virgaurea ssp. leiocarpa var. praeflorens

伊豆諸島南部の固有変種で、本土で良く見られるミヤマアキノキリンソウと近縁と考えられているそうです。花期は比較的遅く、今回もたくさん観察することができました。

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ハチジョウアザミ Cirsium hachijoense

11月の八丈島ではアザミの花がたくさん見られました。海岸沿いにはより葉に棘がきつく光沢のあるハマアザミ(C.maritimum)が見られ、八丈富士登山道ではハチジョウアザミ(C.hachijoense)が多く咲いていました。

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イズノシマダイモンジソウ Saxifraga fortunei var. jotanii

八丈島では八丈富士登山道のほか、三原山の林道の切り通しなどにまとまって群生しているのが見られました。

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シチトウスミレ Viola grypoceras var. hichitoana

通常花期は春ですが、11月に咲いている個体も2~3株ほど見られました。

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八丈富士の山頂に着くと、ハチジョウイヌツゲの合間に綺麗に熟した赤い実が見られました。おそらくつる性植物のサルトリイバラと思われます。

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山頂部のお鉢に沿ってはシマノガリヤスの草原が目立ちます。森林が繁茂しないのは強風による風衝作用と思われますが、何となく台湾北東部の山地の植生を思わせる景観でした。

 

火口内の植物

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八丈富士の火口は巨大で、内部の凹地にはユズリハやヤマグルマなどの木が生い茂っています。

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火口内へ足を踏み入れると、森の中には多種多様なコケとシダ植物がびっしりと密集していました。

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枝という枝にコケがまとわりつき、木の幹にはシシランなどのシダ植物がびっしりと着生している様は圧巻でした。

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三原神社の鳥居はそんな森林の中に埋もれるように立っていました。

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これはコウヤコケシノブとヌカボシクリハラン...のような気がしますが、シダ植物の判別には自信がありません。「八丈島の植物ガイドブック」と「くらべてわかるシダ」を手に歩いていたのですが、もう少し観察眼が必要になりそうです。いずれにしても八丈富士の火口は、八丈島の中では三原山と並んでシダ植物の観察に絶好の場所です。

くらべてわかる シダ (くらべてわかる図鑑)

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  • 作者:桶川 修
  • 発売日: 2020/04/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

雲霧林の雰囲気を存分に味わったところで、再び火口壁の上に戻ってお鉢めぐりを開始します。

お鉢巡りの景色

 

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お鉢の西側は八丈小島を見ながら歩くことができます。八丈富士から見るととても小さく見えますが、こう見えても標高600mを越える背の高い島です。

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北側にはガレ場があり、海と山が織りなすダイナミックな景色を楽しみながら歩くことができます。天気が良ければ海の向こうに御蔵島が見えるはずでしたが、今回は少し曇っていて見えませんでした。

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一周歩くと底土港と三原山の景色が戻ってきます。八丈富士のお鉢巡りは本場富士山のお鉢巡りに負けず劣らず素晴らしい展望が楽しめました。

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参考になる資料やウェブサイトなど

八丈ビジターセンターは植物公園内にある自然・文化解説施設です。ウェブサイトでは八丈島で見られる動植物について詳しく紹介しているほか、毎月発行されている「こっこめ通信」はその月ごとのホットな話題を盛り込んでいて面白いです。

図説 日本の植生 (第2版)

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  • 発売日: 2017/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 「図説日本の植生」は私が通っている図書館に置いてあってよく読んでいるのですが、P128-131には島嶼の植生について、P136-137には八丈島の植生に関する説明があって、とても参考になりました。

https://www.hachijo.gr.jp/39rhf0e/wp-content/uploads/2017/07/hachijoufuji_map.pdf

八丈島の簡易登山マップです。ルート概要を把握するのにちょうど良いです。