ニュージーランドは大陸から長く隔絶された歴史を持ち、固有の生物相を持っています。鳥類についても固有種がたくさん棲息しており、飛べない鳥である「カカポ」や「タカヘ」などはその中でも特に有名でしょうか。一方、ポッサムやオコジョなどの外来哺乳類による補食の危険にも晒されており、多くの固有種が絶滅を危惧されています。
そんなニュージーランドでは「New Zealand Threat Classification System」において、鳥類を含む生物を絶滅リスクの深刻度に応じて以下の通り分類しており、それぞれ保護が行われています。
1)Nationally Critical
Most severely threatened, facing an immediate high risk of extinction:2)Nationally Endangered
Facing high risk of extinction in the short term:3)Nationally Vulnerable
Facing a risk of extinction in the medium term:
日本でいう絶滅危惧Ⅰ類やⅡ類などに相当するものと言えるでしょう。
これらに指定されている鳥は生息数が多くないので都市で見ることは少ないですが、国立公園の自然の中に入っていくと比較的頻繁に観察することができます。今回は私が山に登る中で観察できた鳥を紹介したいと思います。
Kea (Nestor notabilis)
Kea(Nestor notabilis)はニュージーランドの山を代表する鳥で、その名の通り、「キーア!」という甲高い声で鳴きながら高山を飛び回っています。
フィヨルドランド国立公園のLivingstone Rangeにて2016年2月撮影。
50センチほどの体長にエメラルドグリーン、エメラルドブルーに輝く羽を持っていて、その飛翔する姿はとても風景に映えます。好奇心が強く、登山者に接近してくることも多いため、比較的撮影チャンスには恵まれます。一方で登山者のテントがKeaによって破壊されるなどの被害も後を絶たず、少々厄介な存在でもあります。
自然保護局(Department of Conservation)によると生息数は3000~7000羽で、上記の基準で2)Nationally Endangered に指定されています。
Cascade Saddleにて2016年2月撮影。
New Zealand rock wren (Xenicus gilviventris)
New Zealand rock wren (Xenicus gilviventris)はニュージーランド固有のイワサザイ科の鳥で、南島の高山帯、亜高山帯のみに生息しています。脚が長く、頭部に白い筋があるのが特徴的でしょうか。地上近くをちょこまかと動き回るのが特徴ですが、そのため撮影するのは大変でしたし、うまく撮ることができませんでした。
New Zealand rock wrenは冬季にも低地に移動することなく高山の岩場で越冬するそうです。捕食者となる外来哺乳類が入り込むことが難しい環境に生息することから、絶滅を免れてきました。一方、近年では地球温暖化などに伴って卵や幼鳥がオコジョなどに捕食されやすくなり、生息数の減少が強く懸念されているとのことです。上記基準で2)Nationally Endangeredに指定されています。
Banded Dotterel(Charadrius bicinctus ssp. bicinctus)
Tongariro Northen CrossingのEmerald Lake下で2016年1月15日に撮影。
Banded Dotterelは胸元に茶色い模様があるのが特徴的な小さな鳥です。通常は海岸地帯や低地の河床などで見られることが多く、山の上で見られることは珍しいようですが、稀に繁殖期の個体が北島火山地帯などで観察できるようです。私は北島のトンガリロ国立公園で偶然目にしました。
上記基準で3)Nationally Vulnerableに指定されています。
参考
以上記述の多くは上記ウェブサイトを参考にしました。詳しい解説と豊富な写真でニュージーランドの鳥を紹介しており、鳥を分類や生息地域などから検索することができるのでとても便利です。
書籍を探している人には、Photographic Guideのシリーズがおすすめです。あまり写真や印刷の質は良くないような気もしますが、ポケットタイプでフィールドに携行できるのは便利です。鳥類の他にも高山植物、シダ植物、昆虫など様々な書籍があり、一式揃えればニュージーランドの自然観察が楽しくなります。