先日、岩手県は北上山地の早池峰山に登りました。早池峰山は蛇紋岩からなる特殊な地質と、それに起因する特異な植生で知られています。特に早池峰山の南面は標高1,400mを越えたあたりで森林限界を迎え、標高1,900m超の山頂まで広がる岩塊斜面の合間を縫って様々な高山植物が咲きます。
そんな早池峰山の植物の中でも、特によく知られているのはハヤチネウスユキソウ(Leontopodium hayachinense)です。
ハヤチネウスユキソウの花は大型で白い綿状の毛に覆われ*1、「ウスユキソウ(薄雪草)」の名前の通り、うっすらと積もった新雪を思わせる質感を持っています。そして葉や茎も含めた株全体に白い光沢があって、遠目にもよく目立ちます。
日本のウスユキソウ属の植物は5種と2変種が知られているそうですが、ハヤチネウスユキソウはその中でも特に輝きを放っているような気がします。
日本の山で私が出会ったウスユキソウの仲間の中で印象的なものをもう一つ挙げるとすると、それはホソバヒナウスユキソウ(Leontopodium fauriei var. angustifolium)です。ホソバヒナウスユキソウは、ミヤマウスユキソウが蛇紋岩地帯で矮小化した変種で、尾瀬の至仏山や谷川岳の限られた場所でスポット的に見られる珍しい植物です。
全体的に細くか弱い印象を受けますが、先日登った至仏山の山頂付近では大きな勢力を持っていて、7月の山の主役を飾っていました。
ウスユキソウの仲間は決して蛇紋岩地帯のみで見られるわけではありません。けれども、蛇紋岩の山では普段高山でよく見られる植物が見られなかったりするので、そんな場所にも綺麗な姿で*2適応しているウスユキソウの存在感が相対的に浮かび上がってよく目立つような気がします。だから私にとっては「蛇紋岩と言えばウスユキソウ、ウスユキソウと言えば蛇紋岩」がついつい思い浮かびます。