休学中の記録

日本と台湾のフェーン現象について

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三連休はとても暑い日が続きました。この時期にはよくあることですが、山を越える風が高温になって吹き降ろす「フェーン現象」によって、全国的に見て北陸地方をはじめ日本海側の気温が特に高かったようです。

さて、このフェーン現象ですが実はお隣の台湾でもよく知られています。台湾ではフェーン現象のことを「焚風(fénfēng)」と言うのですが、「焚風」の文字は現地のニュース記事でも頻繁に目にします。字面から暑さが想像しやすく、「フェーン(Föhn)」の音訳もしっかりと意識されているのでとても覚えやすい訳語です。

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図:台湾東部にフェーン現象をもたらす南西風

日本の場合、フェーン現象と言えば特に北陸地方や東北地方の日本海側が思い浮かびますが、台湾で「焚風」と言えば台東などの東部が代表的です。台湾の夏季は南西季節風が卓越するのですが、風が中央山脈を越えて吹き降ろすと風下側の東部では気温が上昇します。

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また、台湾東部でフェーン現象が特に顕著となるのは、台風や前線が台湾北部を通過するケースです。つい最近も7月末の台風6号の通過に伴って顕著なフェーン現象が発生し、台東県の太麻里では史上最高気温となる40.6度を記録しました。

上図は太麻里で40.6度を記録した7月25日の天気図*1です。天気図を見ると、台風6号が台湾北東部の沖合を北上しています。台風が南から暖かい空気を運び、そしてその台風に吹き込む強い南西風が中央山脈を越え、熱風となって東部に吹き下ろしたことが想像できます。

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台湾の中央気象局のウェブサイトには、気象観測点で観測された歴代の高温記録が掲載されていますが*2、そこでもTOP3は台東やその南の大武に占められ、15位以内で見ても台東・大武が半分以上ランクインしています。そしてこれらの記録のうちのほとんどが、台風や前線の通過に伴ってフェーン現象が発生したパターンとなっているようです。*3

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台鉄の車窓(台東県・太麻里付近)

さて、話を日本に戻しますと、日本のフェーン現象もまた、台風や前線に絡んでいることが多いです。特に夏場に台風が日本海~大陸のあたりを北上し、南に勢力の強い太平洋高気圧が居座っている気圧配置はフェーン現象が発生しやすい典型的なケースです。

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1933年7月25日、山形で40.8度の記録的高温を記録した際の天気図

日本と台湾は緯度の差こそあれ、四方を海に囲まれ、高い山脈があり、季節風や台風、前線の影響を受けるという点では共通していて、結果としてフェーン現象をはじめ共通する気象現象が見られるのは面白いところです。

*1:気象庁ウェブサイトの「過去の天気図」より転載

*2:2021年7月25日のデータはまだ入っていないようです。

*3:台北も上位に名を連ねていますが、こちらは太平洋高気圧に覆われた際に盆地の地形的な効果で高温になりやすいことが背景にありそうです。