蔵王の旅の続き。山形盆地を北上して山寺、鳴子温泉へと向かう。
5月19日
蔵王温泉を出発して山形盆地へと降りていく。蔵王の標高は900mほどあって、八重桜が綺麗に咲いていたので東京と比べて1ヶ月程度季節が遅れているイメージだろう。山形の盆地まで降りてくると季節が進んだような感覚がある。
1時間弱で山寺の山麓に着いた。玉こんにゃくを食べながら階段の山道を登る。五大堂から見る景色は開放感があってとても良い。新緑がまぶしい山々と、その間を走るJR仙山線。しかし山麓の町はあまりにも駐車場が目立つのが少し残念だろうか。
途中、東根の「そば処 東亭」にて肉蕎麦の昼食にする。冷たいそばと温かいそばを選べるが、ちょうど気温も高く、28度くらいまで上がっていたので冷たい方にした。出汁はとても美味しかったが、個人的にはかけそばならやっぱり温かい方が好きかもしれない。
山形は雪国のイメージがあるが夏はフェーン現象で暑くなるらしく、1933年に記録した40.8度の最高気温記録は2007年に熊谷市に抜かれるまで長らく日本一だった。そんなこともあってか、麺類を冷たいスープで食べる文化があって、そういえば5年前に朝日・飯豊の山々を歩いた時に立ち寄った山形市で冷やしラーメンを食べたこともあった。
尾花沢まで北上してから県道27号線に入る。少し残雪の残る山々を背景に一面の田んぼが広がる。東北の穏やかで優しい景色に癒される。JR陸羽東線に合流してからは国道47号線。最上川の支流の小国川に沿って進んでいくが、いつの間にか宮城県側に出ており、驚くほど簡単に中央分水嶺を越えた。
鳴子峡で小休止してから、温泉街へと車を走らす。
立ち寄ったのは「こけしの菅原屋」。絵付け体験だけではなく、ろくろを回してカンナで木材を削り、こけしを成形するところから体験できる素晴らしいお店だ。一人1080円。
まずは頭を形づくり、首、腰のくびれの順番で成形していく。カンナの位置を固定するのが難しく、つい持っていかれそうになる。肩に力が入ってあらぬ箇所を削ってしまったりすることもあるが、そこは菅原屋のおっちゃんが適宜手をいれてくれる。
もともとはただの木の切れ端でしかなかったのに、こうして削ってみると本当に魂が宿っているような気がしてくる。
黒・赤・緑の絵の具で絵付けをする。自分の場合塗り絵をするようにまず枠を決めて塗りつぶすように色をつけてしまうので、必然的に色の濃淡が表現できずに赤も緑も全て黒ずんだ色に出来上がってしまう。軽やかな筆使いで繊細な色の違いが表現できるようになればきっとプロなのだろうが、それでも上出来だろう。
最後に蝋を当てて塗り込んでもらい、つやが出ると完成である。ニスなどでは時間と共に剥げてしまうが、蝋だとその心配はないのだという。オリジナルなこけしができると感動もひとしおである。とても楽しい体験になった。
夜は大江戸温泉に泊まる。ワンストップで食事(バイキングでお酒も飲み放題!)も温泉も(源泉があって泉質の異なる温泉に浸かることができる)娯楽も(漫画ルームまである)揃うことを考えるとやっぱりその魅力も否定できない。自分ひとりなら渋い旅館に泊まって温泉街をそぞろ歩きたかったのだが、またそれとは別種の楽しみ方も時にはあって良いだろう。夕食後そのまま就寝しても良かったが、折角なので共同浴場「滝の湯」に浸かって、中で見知らぬおっちゃんと温泉談義をして、付近のこけし屋を覗き、しそ巻きをお土産に買って、火照った体を散歩で冷ましながらホテルに戻った。
「滝の湯」はThe 東北の湯治場といった雰囲気でとても良かった。
5月20日
朝食も豪華なバイキング。お腹いっぱい食べてから帰途につく。鳴子温泉駅からは陸羽東線に乗って古川まで。
何気なく車窓を見ていると屋敷林を備えた立派な民家と一面に広がる水田、そして勢いよく清涼な水が流れる用水路の景色が印象的だった。後で調べてみるとこの地域は「大崎耕土」の名で世界農業遺産に認定されているのだという。
古川駅で乗り換え。時間があったので駅周辺を少しぶらぶらしてみる。「東日本の新幹線駅あるある」ではあるが、立派な新幹線駅でありながら駅前は本当に何もなくて寂しいところである。一軒だけ山の古書が沢山飾られた「Cafe Monte」という素敵な喫茶店があったのでまた機会があれば。
そして新幹線に乗って帰京した。そのまま午後から出勤.....