GWは人込みを避けて雪国の山を歩いていました。この時期の雪国の山は木々が明るい色の新芽を芽吹かせ、林床には色とりどりの花が一斉に咲き始めます。
雨が降ることも多いのですが、しっとりと濡れた新緑と林床の花々も生命力に満ちて魅力的です。そして雨が上がると季節が一段と進み、標高の低いところから高いところへと春が駆け上がっていきます
今回はそんな雪国の春の雰囲気に浸りながら、森をゆっくりと散策して回りました。
オオイワカガミ(Schizocodon soldanelloides var. magnus)
イワカガミは北海道から九州まで分布していますが、雪国では特に葉が大型のオオイワカガミという変種が知られていて、今回観察したのもこれに当たると思われます。
ニリンソウ(Anemone flaccida)
春の林床を彩る代表的な野草の一つで、渓流沿いに見事な群落が広がっていました。北海道やサハリンにも広く分布しており、食草としてアイヌ民族は汁物(オハウ)に入れて食べることが多かったということです。
ヒトリシズカ (Chloranthus japonicus)
真っすぐに茎を伸ばし、上部にまとまって4枚の葉と白い花がついていて名前に違わず美人な(?)佇まいでした。アイヌ民族は干して煎じた汁をお茶として飲んでいたそうです。
フキ(Petasites japonicus)
林道沿いなどで至るところに見られました。フキノトウ味噌が無限に作れそうだなー、と思ってしまうくらいには生えていました。
オオバキスミレ(Viola brevistipulata)
雪国で多く見られるスミレで、雪解け後の山の斜面に大きな葉を広げて色鮮やかな黄色い花を咲かすのでとても良く目立ちます。スミレといえば紫色が思い浮かびますが、個人的に黄色のスミレに出会うのは大雪山で見たタカネスミレに次いで2回目です。
スミレサイシン(Viola varginata)
雪国を代表する大型のスミレです。写真をよく見ると花の上に蟻の姿が見えますが、こうした昆虫と花の関係も調べてみると面白そうです。また、手元にある山菜の本によると、別名「とろろすみれ」と言って、かつては地下茎をとろろ状にして食べることがあったそうで、色んな意味で興味が尽きません。
カタクリ(Erythronium japonicum)
カタクリは関西や関東でも見られるのですが、やはり雪国で見られる群落は規模が大きく立派でした。今回あちこちで見ることができました。
オオミスミソウ (Hepatica nobilis var. japonica)
初春の雪解けと共に真っ先に花を咲かせることから「雪割草」と呼ばれることもある花です。今年は雪解けが早かったのでGWにはほとんど花が見られませんでしたが、場所を選べばかろうじて残っていました。
キクザキイチゲ(Anemonoides pseudoaltaica)
雨の日は花を開かないのでなかなか観察できませんでしたが、最後の日にかろうじて開いている花を見ることができました。オオミスミソウと同じく早春にまとまって開花する植物で、時期を選べば一面のお花畑が見られるそうです。
イワウチワ(Shortia uniflora)
可憐な薄桃色の花が印象的でした。イワウチワ属(Shortia)の植物は日本本土、琉球列島~台湾、中国雲南、北米東部に隔離分布しているそうです。調べてみると琉球列島では渓流沿い、台湾では雲霧林帯などでも見られるようですので、是非機会があれば見てみたいなぁ、と色々想像が広がりました。
エゾエンゴサク(Corydalis fumariifolia ssp. azurea)
紫陽花のように花の色合いが絶妙に変化するのがとても印象的でした。「エゾ」の名前が付くことからもわかるように北海道に多く見られ、アイヌ民族は塊根を保存食に利用していたそうです。
エンレイソウ(Trillium apetalon)
3枚の大きな葉が特徴的なので簡単に見分けることができました。「延齢草」の漢字からも想像できるように、日本では古くから薬草として使われていたそうです。
シラネアオイ(Glaucidium palmatum)
大輪の桃色~紫色の花がブナ林の林床でとても良く目立ちます。私が観察したのは3年前に尾瀬ヶ原を歩いた時以来でしたが、今回は5月初旬とかなり早い時期にも関わらず見事な群落がみられました。シラネアオイは日本固有の一属一種なので、まさに日本を代表する植物ですね。
...雪国の春の森はとても彩り豊かでした。是非来年も再来年も少しずつ時期をずらしながら訪れてみようと思いますし、それまで下記のウェブサイトや書籍などを読みながら想像を膨らませようと思っています。