休学中の記録

はじめての保育園お迎え

子どもの頃、長期休暇になると、広島にある祖父母の家に帰省するのが慣例でした。

広島では、祖父母や叔母に本当によく遊んでもらいました。餅つきをして、凧揚げをして、卓球をして、プールに行って、野球観戦に行って...と、毎日とても楽しく過ごしました。

けれども、ちょっとネガティブな性格だったのかもしれません。

楽しさの反動で、関西に帰る日が1日、また1日と近づいていくにつれて、気持ちはどんどん沈んでいきました。

広島に着いたその日から、「あと7回寝ると関西に帰るんだな」という気持ちで眠りにつき、次の日は「あと6回」、また次の日は「あと5回」、そして4日ほどたつと、「ああ、もう滞在時間はあと半分も残っていないんだ...」と、どんどん憂鬱な気分になっていきました。

そして、関西に帰る当日は泣きそうな顔になりながら、後ろ髪を引かれる思いで広島を後にするのでした。

さて、夏休み・冬休みは家族5人で広島に向かったのですが、春休みは両親の仕事の都合もあり、子どもたちだけで広島に向かいました。

今でも記憶が鮮明に残っているのは、そんな春休みに、広島から帰ってきた時のことです。例によって、子どもたちは、まるでお葬式に参加するかのような、うかない表情で最寄りの駅に到着したのでした。

それと対照的だったのが、駅まで迎えに来てくれた母の様子でした。とても嬉しそうにしていて、心なしかいつもより声のトーンも高く、いつもにも増してたくさん話しかけてくれました。

そんなハイテンションの母を、私は少し冷めた目で見ていたのをよく覚えています。

「みんな悲しい気持ちやのに、お母さんは空気が読めないんやなぁ。」と。

...さて、時は流れ、そんな自分も親になりました。そして、4月からは保育園に息子を預けることになりました。

初めて保育園へお迎えに出かけた日、不思議と気持ちが高揚しているのに気づきました。息子に会えるのが、妙に楽しみなのです。

まだ慣らし保育なので、預けていると言ってもたったの数時間の話なのですが。

それでも数時間ぶりに息子の顔を見るのが嬉しいというか、暖かい気持ちになるというか、何とも表現できない気分になったのでした。

そして、その時に不思議と蘇ってきたシーンが、あの広島から帰ってきた日のことでした。「そうか、あの時お母さんがあんなに嬉しそうにしていたのは、そういうことやったんやね」と。

保育園にたどり着くと、息子はベビーベッドですやすやと眠っていました。心配していた冷凍母乳も、嫌がらずちゃんと飲んでいたと聞いて、「良かった」とほっと一息つきました。

息子を受け取って、外に出ると桜が青空に映えていました。鼻歌を歌いながら、ベビーカーを押して帰宅しました。